次のキャリアは大槌で
大邉慧之さん・さやかさん
おおべ・けいし、さやか
ともに大槌町地域おこし協力隊として2022年7月に着任。慧之さんの趣味は釣りと麻雀、古着屋めぐり。さやかさんの趣味はスイーツを食べ歩くこと。おすすめは町内のchari cafeのシフォンケーキ。現在はアパート住まいだが、古民家での暮らしにもあこがれている。
https://note.com/keishi_obe
https://note.com/brainy_ma
rten760
次のキャリアは大槌で
大邉慧之さん・さやかさん
おおべ・けいし、さやか
ともに大槌町地域おこし協力隊として2022年7月に着任。慧之さんの趣味は釣りと麻雀、古着屋めぐり。さやかさんの趣味はスイーツを食べ歩くこと。おすすめは町内のchari cafeのシフォンケーキ。現在はアパート住まいだが、古民家での暮らしにもあこがれている。
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働き方も暮らし方も多様化が進む昨今。夫婦で大槌町に移住し、ともに地域おこし協力隊として地方でのキャリアを切り拓こうとしているのが大邊慧之さん・さやかさんです。クールに見えて実は情熱を秘めた慧之さん、朗らかで気さくな人柄で周囲を明るくするさやかさん。それぞれのやりたいことや得意なことを活かし「人と人とが出会う場所を作りたい」という青写真を描いています。
“まさか”の地方移住
とんとん拍子に大槌に
三重県出身の慧之さんと岩手県出身のさやかさんは東京で知り合い、結婚。慧之さんは設備会社で現場監督として超多忙な毎日を送っていました。現場で働く工事関係者や施主など様々な関係者の板挟みになることも多い業務で、仕事がつらくなることもあったと振り返ります。
そんな時、youtubeで流れてきたのが、地方に移住し林業をなりわいとする夫婦の動画。「こういう生活ができたらいいなあ……」。この動画をきっかけに、地方移住を自分事として考えるようになった慧之さん。地方のユニークな仕事と都市部で働く人たちとをつなぐSMOUTに登録し、情報収集を始めました。
一方、飲食店や学童で働いていたさやかさん。住まいのある練馬では気の合う人たちとのコミュニティにも恵まれ、東京での生活を満喫していました。まさか慧之さんが地方移住を考えているとは夢にも思っていませんでした。
週末も休みが取れず、夜遅くまで残業の日々が続くうち、慧之さんは心身ともに疲労困憊し、退職を決意。SMOUTで見つけた大槌町地域おこし協力隊(ちおこ)への転身を考えていることをさやかさんに告げました。
最初、さやかさんは驚いて反対しましたが、慧之さんの意志が固いことを知ると、2人で移住する覚悟を決めました。
ちょうどそのころ、大槌町では「吉里吉里国」で活動する地域おこし協力隊(ちおこ)を募集しており、慧之さんはあこがれの林業の仕事に就けることに。さやかさんも学童での勤務経験を活かして、ワーカーズコープ大槌地域福祉事業所が運営するねまれやの学童で働くことになりました。
何もかもがとんとん拍子に進み実現した大槌移住。ちおことして働くことへの不安もあったというさやかさんですが、着任直後の懇親会で平野公三町長が「大槌町のためでなく自分のために頑張ってください」と挨拶したのを聞き、肩の力が抜けたと言います。
それぞれの持ち場で学び、
ちおこ仲間や同僚と息抜き
吉里吉里国での活動は、高所作業車を使った大木の伐採作業、クマが住み着きやすい藪の草刈り、「復活の薪」の生産、そして地域内外の子どもたちに薪づくりや木登り、木工などを体験させる交流活動……多岐にわたります。
ちおこの活動の一環として、林業に必要な資格取得のほか、ツリークライミングの技術も学び、さらに森林インストラクターの資格取得に挑戦するなど、慧之さんの森林への興味は膨らんでいくばかり。
「チェーンソーでの伐採は最初、肉体的にハードでしたが、充実感を感じられる仕事。森に入ると気分が安らぎリフレッシュできます」。森林について学ぶ中で、人が森で癒されるのには科学的な根拠があることも知りました。
岩手県内で森林にかかわる人たちと知り合う機会も増え、好きなことを仕事にして生きているロールモデルを見つけたことで、自身が大槌で生きていくイメージが少しずつ描けるようになりました。
さやかさんは放課後を学童で過ごす子どもたちを見守り、さまざまな大人とのかかわりの中で子どもたちが成長していることを実感する毎日。子どもだけでなくお年寄りのサポートや居場所づくりに取り組むねまれやの一員として、高齢者が集まるサロン活動の運営にも参加しています。
おばあちゃんたちと一緒にフラダンスを踊ったり、ものづくりをしたり。「大槌の女性たちは良い意味でおせっかい(笑)で、人と人との距離が近い。面倒見が良く頼りになる人が多いと感じます」。同じ岩手の沿岸部出身とは言え、約20年ぶりの地方での暮らし。戸惑うこともありますが、少しずつ馴れてきました。
時にはちおこの仲間と飲みに行き、美味しいものを食べてリフレッシュ。休みの日にはねまれやの同僚と一緒に岩手県内陸部に買い物に行くなど、すっかり大槌の日常に溶け込んでいます。
「人が出会う場をつくりたい」
ちおこ後の未来を描く。
国の制度である地域おこし協力隊の活動は原則、最長3年。2人はその先を見据えて、将来の暮らし方を夫婦で話し合い、構想を練っています。
今思い描いているのは、半島部の見晴らしの良い場所でのキャンプ場の運営。町外から人を呼び込み、彼らと大槌の子どもたちが交流する拠点を作れないかと考えています。発端は慧之さんが初めてその場所を訪れた時に感じた「ここでキャンプをしたい!」という直感だそう。「大槌の子どもたちが多様な生き方や価値観に触れる場所を作りたい」。思いはふたり、共通です。
「人生の豊かさとは、色々なことを体験し、人と出会うこと」と語る慧之さん。さまざまな人が行き交い、火を囲み語り合う。その中心には薪がある。そんな空間が大槌に生まれる日もそう遠くはないかもしれません。
(2023年9月取材)