ココカラオオツチ

古希前に理想の
田舎暮らしを実現
日課は海までのんびり散歩

大塚正俊さん・よう子さん

大塚正俊さん・よう子さん

おおつか・まさとし、ようこ

ともに愛知県出身、正俊さんは名古屋市職員、よう子さんは名古屋市立病院や福祉施設の看護師を経て、退職。全国各地を訪れオートキャンプを楽しむなど2人ともアウトドア派。大槌に移住してからも、北海道への旅に出るなどアクティブに過ごしている。

大塚正俊さん・よう子さん

70歳を前にして若いころからの夢だった“田舎暮らし”を実現させた大塚正俊さん・よう子さん。住み慣れた愛知県を離れ、選んだ移住先は大槌町でした。毎日、海まで散歩し、趣味の釣りや庭の手入れを楽しむ日々。高台にある見晴らしの良い自宅で、理想通りのんびりとした暮らしを送っています。

大塚正俊さん・よう子さん
釣りに通った三陸への<br />
移住の決め手は住宅

釣りに通った三陸への
移住の決め手は住宅

町内を走る国道から少し入った住宅地に大塚さん夫婦の自宅はあります。1階の窓から外を眺めると、スギや広葉樹の山と青い空。うぐいすのさえずりの合間に時折、三陸鉄道が力強く走る音が響きます。「引っ越す前は岩手の寒さに不安もありましたが、その分、春を感じる喜びもひとしおです」と正俊さんは話します。

大塚さん夫婦はともに40年近く、名古屋市で公務員として働いた後、退職。夫婦で車中泊やテント泊などオートキャンプを楽しむライフスタイルを送っていました。そんな2人が長年のあこがれだった田舎暮らしの候補地に三陸を選んだのは、正俊さんの趣味の釣りがきっかけでした。

名古屋から夜行バスや新幹線で三陸に通い、岸壁釣りを楽しんでいた正俊さん。通いなれた地域が東日本大震災で大きな被害を受け、震災後間もない時期からボランティアセンター運営などの支援活動に参加しました。「釣りやボランティアで来ていた当時は正直、移住までは考えていませんでした」と明かす正俊さん。「移住という決断の決め手は、間もなく70歳という年齢でした」。“70歳”という年齢が間近に迫ってきたことが2人の背中を押したと言います。

「決めるなら今だ」。そう決心し、思い浮かんだ“田舎”が、幾度となく通った三陸でした。インターネットで岩手県沿岸部の空き物件の情報収集を開始、ピンと来たのが、後に住まいとなる築40年ほどの一戸建て住宅。事前にインスペクション(専門家による住宅診断)を済ませた大塚さんは見学して即、購入を決意。町の「空き家リフォーム支援補助金」を活用して床や壁などを張り替え、住み心地の良い新居を手に入れました。

わかめ、うに……ご近所からの<br />
頂きものやお茶っこのお誘い
わかめ、うに……ご近所からの<br />
頂きものやお茶っこのお誘い

わかめ、うに……ご近所からの
頂きものやお茶っこのお誘い

引っ越し直後はご近所への挨拶回り。すると、大根や玉ねぎ、春にはわかめ、初夏にはうになど、さまざまな地域の食材がおすそ分けされるように。高齢者からは「お茶っこ、してって」と誘われることもしばしば。「近所の方々は親切な人ばかり。どなたがくださったか分からないわかめが玄関に置いてあった時は驚きました」と笑うよう子さん。津波による被災をまぬがれた地域だからこその古くからのつながりが、移住してきた大塚さんをあたたかく迎え入れています。

釣りだけでなく、古い看板の撮影や囲碁など多彩な趣味を持つ正俊さん。自作の川柳「古希前に 釣りがしたいと この町へ」が町の広報誌に掲載されると、釣り好きを知った近所の人たちが、釣り道具まで持ってきてくれるようになりました。よう子さんの趣味は土いじり。真冬に引っ越してきてしばらくは、竹藪と化していた庭の竹と格闘する日々だったと言います。その甲斐あって今は色とりどりの花が咲く美しい庭の手入れを楽しんでいます。「土があんな風に凍るというのも東北ならでは。毎日何かと初めての体験がありますね」とよう子さんは朗らかに語ります。それぞれに趣味を持ち、どんな体験も楽しむ2人とっては、のんびりした暮らしの中にもさまざま発見があふれています。

「海の景色は毎日違う」<br />
発見に満ちた大槌での日々
「海の景色は毎日違う」<br />
発見に満ちた大槌での日々

「海の景色は毎日違う」
発見に満ちた大槌での日々

日常の買い物は町内のスーパーへ、隣町の道の駅や業務用スーパーなどに足を運ぶこともあるという大塚さん夫妻。「渋滞がないので10kmでもあっという間。普段の生活で不自由に感じることはありません」と口を揃えます。愛知では見かけることのなかった魚介類や原木しいたけなど地域の山のものを見て回るのも楽しみです。「こんな大きい牡蠣はこれまで見たことがなかった」という牡蠣や、正俊さんが釣ってきたかれいなど、三陸の海の恵みを堪能しています。

日課は、海まで片道15分の散歩。時には、お弁当をつくって海岸でゆったりと過ごすことも。「海の景色は毎日違って、見飽きることがありません」とよう子さん。目の前には湾内の穏やかな海、その先に視線を向けると、リアス海岸ならではの入り組んだ山と海、そしてどこまでも続く青い空。自然を愛する2人の理想的な暮らしが大槌にありました。(2022年7月取材)