人を呼び込みにぎわいを
一般社団法人 大槌町観光交流協会
2018年設立。地域のにぎわいを創り出すイベントの運営のほか、町外からの人やお金の流れを生み出すために、ふるさと納税サイトの運営や特産品の販売、体験型観光の企画運営、町内の宿や飲食店の発信などに取り組む。instagram、facebookなどSNSでの発信にも力を入れている。
https://otsuchi-ta.com/
人を呼び込みにぎわいを
一般社団法人 大槌町観光交流協会
2018年設立。地域のにぎわいを創り出すイベントの運営のほか、町外からの人やお金の流れを生み出すために、ふるさと納税サイトの運営や特産品の販売、体験型観光の企画運営、町内の宿や飲食店の発信などに取り組む。instagram、facebookなどSNSでの発信にも力を入れている。
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「ひょうたん島」として親しまれる大槌町のシンボル蓬莱島をモチーフにした三陸鉄道・大槌駅。この大槌の玄関口に事務所を構えるのが大槌町観光交流協会です。自身も移住者である平賀聡事務局長のもと、地域の若手人材や地域おこし協力隊がそれぞれの持ち味を発揮し、地域資源の発掘や発信に取り組んでいます。
大手旅行会社から
復興支援職員を経て、協会設立
町観光交流協会は、町が直接運営してきた観光協会の後継組織として、2018年に発足しました。発足前から組織の立ち上げに奔走してきた平賀さんは、岩手県の内陸部・花巻市の出身で、20年近く大手旅行会社に勤務し、営業やツアーの企画・添乗などの経験を積んできました。
長年、観光業に携わってきた平賀さんが、大槌で働くようになったきっかけは、東日本大震災でした。2013年に旅行会社を辞め、町の任期付き職員に転身、被災した地域住民のコミュニティづくりの支援などに取り組んできました。
5年間の任期が終わりに近づくなか、任期後のキャリアについていくつかの選択肢を検討した平賀さん。大槌に残るのか、別の地域で働くのかを考え、自身にこう問いかけました。「おれは5年間でやるべきことをやり切っただろうか」。
平賀さんの出した答えは「No」。「今、大槌を去ったら、何もしなかったのと同じじゃないか」。平賀さんは、大槌にとどまり復興や地域づくりにかかわり続ける道を考え始めました。
ちょうど同じころ、役場内では、観光協会を独立した組織として発足させる構想が動き出そうとしていました。そこで、観光に精通した平賀さんに白羽の矢が立ちました。行政の一員として復興にかかわるなかで「復興した町が生き残っていくためには、町外から人を呼び込むことが欠かせない」と考えるようになっていた平賀さんは「自分でよければ」と新組織の立ち上げという重責を負うことを決意しました。
定款作成などの手続きを進めながら、事業内容を固めていきました。「町外から来る人と町民との交流のなかから、町が生き残る道が見えてくる。町が生きていくために必要な組織でありたい」。その思いを込めて、名称は「大槌町観光交流協会」に。“交流”の2文字に、平賀さんが理想とする協会への思いを込めました。
チャリクエ、地曳網体験……
個性豊かな町民とふれあう
体験プログラム
業務は、大きく分けて
▼“復興ツーリズム”や体験プログラムの企画運営を軸とした観光部門
▼ふるさと納税部門
▼ECサイト運営やイベント出店など物産部門
▼「岩手大槌サーモンまつり」などのイベント運営部門
の4部門。
発足時、平賀さんを含めて3名でスタートした協会は、コロナ禍の影響を受けながらも、それぞれの事業を成長させ、2021年度からは地域おこし協力隊も加わって10名を超える組織に。町内外の人々が集い、にぎわいを創り出す大槌町の要として存在感を発揮しています。
観光部門で力を入れているのは、体験や交流のプログラムの開発です。各地の観光を知る平賀さんから見ると、「三陸の観光資源は横並び」で、大槌の特色を出すのは難しいように思えました。その中で、可能性を見出したのが、個性豊かな地域住民とのふれあいという“資源”でした。「この町で働くうち、土地の雰囲気を作り出すのは住民の人柄であり、最大の資源は人なのだと確信しました」と語る平賀さん。その思いに共感する地域おこし協力隊が中心となり、地曳網体験など、さまざまなプログラムの開発を進めています。
体験プログラムのひとつが、電動自転車で町内を巡る「チャリクエ」。ひょうたん島など景勝地を回る合間に、飲食店や小売店に立ち寄ると、当日限定の参加賞がもらえるという趣向で、お店の人たちと自然に会話ができるのが魅力で、参加者から「もう一度参加したい」と好評です。平賀さんは「おせっかい焼きで面倒見が良いのが大槌人。そんな町民の人柄にふれるきっかけにしてもらえれば」と話します。
「任せることで人は成長」
ヨソモノ目線を観光に活かす
自称“体育会系”の平賀さんが率いる観光交流協会。職場の雰囲気について、若手職員は「迷うことがあれば、仲間や平賀さんに気軽に相談し助けてもらえるし、ざっくばらんに愚痴も言い合える。のびのびと働ける環境です」と語ります。
職場のリーダーである平賀さんは「仕事を任せることで人は成長する」が持論。地元出身の若手職員や地域おこし協力隊にも、細切れの業務を分担させるのではなく、企画全体を任せ、その中で学びながら成長することを理想と考えています。
地域おこし協力隊もそれぞれ、体験・交流プログラムの開発、ふるさと納税の新たな返礼品の企画など、協会の主要な事業で中心的な役割を任されています。「大槌の魅力的な資源を磨き上げ発信していくためには、ソトからの目線も必要。地域のメンバーと協力隊とが、それぞれのアイデアや知識を活かすことで、大槌につながり、交流する人を増やしていきたい」。2018年に生まれた観光交流協会は、まだまだ進化を続けています。
(2022年7月取材)